不便益システム研究所

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不便益読み物バックナンバー

発明・発想支援

TRIZ

発想や発明に対する支援手法は従来からいくつも知られているが、その多くは経験から導かれたものであり理論的な裏づけが弱いのに対して、数百万件の特許を解析した結果から導かれたという 意味でTRIZ理論 [TRIZ04] は異色である。アルトシューラーは1940年代から始めた特許の帰納的・統計的な調査の結果、発明的問題解決技法 (TRIZ) を構築した。ソ連では多くの研究機関や大学で20年以上にわたって実践的な活用が図られたが,ソ連崩壊後に多くのTRIZ研究者が米国に渡ったために西側に知られることとなり、90年代にはTRIZをベースとした商用ソフトウェアが開発されるに至っている。

TRIZの根幹を成す知見の中でも、不便益と関連しそうなのが、

  • 数百万件の中で発明の名を冠するに値する数%の特許は、おしなべて「あちら立てればこちら立たず」という況を打開したものである
  • それらは、40数種の考え方 (発明原理と呼ばれる)を用いている

という2点である。

直面する問題の解決に、事例ベースを使って過去に解決した類似の問題とその解法を提示するのではなく、
良い具合に抽象化した「発明原理」を示す方法は、中途半端ではなく中庸であろう。

また、もし仮に「不便益」は「不便なモノでも立場が違えば便利なコトがある」という安直な主張でしかない場合でも、まさに立場の違いによる 「あちら立てればこちら立たず」状態はTRIZを援用して新しい発想が得られるスタートポイントである。

セレンディピティ

「セレンディピィティ」という言葉は、近年は日本でもいたる所で様々な意味で使われるようになったが、そのハシリとも言うべき著書: 偶然から モノを見つけだす能力 [澤泉02] によれば、セレンディピィティはaccidentとsagacityを要素としている。

accidentは「偶然」と訳されるが、素直にアクシデントと訳せば「不便」 と通じ、sagacityは不便を益とする能力の一種と考えても良いのではないか?

[TRIZ04] D. Mann、TRIZ 実践と効用 -体系的技術革新-、 創造開発イニシアチブ (2004)
[澤泉02] 澤泉重一、偶然からモノを見つけだす能力、 角川書店 (2002)