不便益システム研究所

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不便益読み物バックナンバー

遊環境デザイン

遊具にみられる能動的働きかけ

一見しただけでは使い方がわからないという不便は、少なくとも遊具には許される不便益の一つであろう。様々な働き掛けを促し、できれば予想を越えた発見をさせ、それが使用できたことで達成感や満足感を与え、それがさらに働き掛けを促すという正のフィードバックは、有用である。

スポーツ用品

全に思い通りに使えるスポーツ用品があれば、そのスポーツは面白くなくなる。うまく使うためには自分のスキルアップが不可欠な道具が、楽しさや能動的働きかけを引き起こす。

遊具と発創支援と不便益

発創支援手法の一つとしてTRIZ理論が知られ、これを実装して商用ソフトウェアとしたCREAX社 (ベルギー) は大学のゼミ指導もしている。その卒業研究の一つ[Leen06]は、まさに我々の「不便益」と同じ視座にあった。

For kids, playing means more than just a game. Playing is almost as significant as eating and sleeping. It’s important for the creative, constructive, comprehensive, social and motorial evolution for children. Toys can be seen as an opportunity to start playing.

But, lots of toys are too narrow and predictable. Children can only follow the instructions and don’t have the opportunity to be creative themselves. Good toys invite children to make choices and search for challenges.

このような視点から、新たな遊具 bOwkit が考案された。

遊環境における身体的インタラクションのモデル

「遊具」に着目すると、遊具と遊び手との間に発生する身体的インタラクションから、設計者の意図とは異なる使用法が誘発され、またその誘発が遊び手の様々な発達を促している。その背後にある系の構造を調べるため、まず Vygotzkyの言語的思考における単位としての「語の意味」を参考にして、 Barthesの記号論における「モードの体系」で使われる単位を翻訳した「遊び行為を文節化する単位」を設定し、遊具や遊環境と遊び手との関係を含めた遊びの楽しさの生成過程を表現した。これに基づいて、 身体的インタラクションを媒介するインタフェースとして「遊具」を捉え、 設計者ー遊具ー遊び手の三者関係を情報チャネルとしてモデル化 した[本吉04]。

[Leen06] Leen Decoster: TRIZ Case Stdy -Product Innovation for Outdoor Toys-; Industrial Desing Department PIH, Hogeschool West-Vlaanderen (2006)
[本吉04] 本吉、川上、塩瀬、片井: 遊環境における知覚-行為連鎖の構造分析に基づく 身体的インタラクションの情報チャネルによるモデル; ヒューマンインタフェース学会論文誌, vol.6, no.4, pp.389-399 (2004)