不便益システム研究所

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なにを作るべきかのカギ

理解社会学 (Max Weber)によると、「人の判断の基礎は、価値 ( wertrationell: value-rational)・目的 (zweckrationell: goal-rational)・因果 (causal-rational) 合理性のいずれかである」とされる [VE84]。 この視点から「ものづくり」を眺めると、何を作るか (目的) を指示 された後にエンジニアが追求するのは目的・因果合理性である。ところ が今や、その目的そのものに価値があるかを問う、すなわち価値合理性に基づく判断が要請される時であろう。 その問いに答える手がかりとして、不便益に注目している。

「What と How」というくくり方をすると混同しそうだが、もう少し大きく 「設計と生産」という視点からみても、不便益とは

  • 「何を作るか」を考えるとき、”全自動**” は便利なようだが面白みが無い。全自動と手動の中間にあって、「中途半端だなぁ」とは言われず「遊び心あるねぇ」と言われるには?
  • 「どう作るか」を考えるとき、ラインの自動化は一見便利だが、工夫を加える余地がなくなり、モチベーションや改善意欲も維持できない。自動化とモチベーションのバランスをとる「中庸」とは?

という問いに答えようとするものでもある。ユニバーサルデザイン (UD)が提唱された時、特定の身体能力にターゲットを絞らない事は購買層を広げることと言われた。「中庸」を求めることはUDと同じ方向への別のアプローチにならないだろうか。

  • ユニバーサルデザイン ( 「便利」の整理 、可視性 )
  • ヒューマンファクター (部分的自動化の問題)
  • ユーザビリティ (中途半端ではなく中庸)
  • 発明・発想支援 (TRIZ, セレンディピィティ)
  • エコロジズム (外延的説明と内包的説明)

[VE84] 渡辺大介: VE理論の研究 -設計学的アプローチ-, 第17回VE全国大会研究論文集, pp.117-124 (1984)